Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「それで?私と古庄先生が、仲よくお祭り見物に行ってたと思ったわけ?」
遼太郎は訝しげに口をへの字にして目を逸らし、無言でうなずきもしない。
「昨日はね。古庄先生と祇園祭の補導に行かされてたの。夜まで仕事してたんだから、『先生、大変だね』くらい言いなさい。」
と言いながら、みのりはポンと遼太郎の背中を叩いた。
「……先生、大変だね。」
遼太郎がしょうがなく反復すると、みのりはフフフ…と笑って、上目遣いに遼太郎を見た。
遼太郎は誤解していたのが恥ずかしかったのか、唇を噛んではにかんだ笑顔を見せた。
「さて!始めましょっか。」
みのりが机向き直ると、遼太郎もシャープペンシルを握った。
夏の朝の涼しい風が、正面の窓から入ってきて、みのりの肩に着くくらいの髪が揺れた。その髪を耳にかけると、耳に小さなピアスが光る。
なぜかホッとしていた遼太郎は、すぐ隣にあるその光景から、少しの間、目が離せなかった。
しかし数日後、遼太郎は少し後悔することになる。
みのりの個別指導が、想像を超えて厳しいのだ。
この渡り廊下の長机で、教師へ質問などをしている他の生徒たちは、楽しげに談笑しながら勉強してたりするけれど、みのりとのそれはピリピリと空気が張りつめていた。