Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
個別指導を受ける前は、みのりと二人で楽しく勉強ができるくらいに思っていた遼太郎だが、その妄想は儚く散ってしまった。
第一、みのりが持ってくる演習問題は難関大学の入試問題で、遼太郎にとっては、何のことを問われているのかも見当がつかないようなものもある。
遼太郎が悲鳴のようなため息を吐くと、
「いつも授業でやっているような問題をやってても、なかなか実戦力はつかないわよ。」
と、みのりに切り捨てられた。
3年1組で配られる課題プリントの問題は、基礎の基礎で、それはクラス全体のレベルに合わせたものということ。模試に対応する力をつけさせるために、個別指導を勧めたみのりの意図を、遼太郎は今更ながらに実感していた。
実感してはいたが、この厳しさは根を上げたくなる。
みのりは初め、遼太郎の負担を考えて、補習の前の1時間だけの指導にして予習も復習もいらない、と言っていたのだが、予習のために前もって問題をもらえるように、遼太郎の方から言い出した。
自分はそんな状態なのに、どんな問題を目にしても的確に正解にたどり着くみのりの知識の豊富さにも、遼太郎は感嘆していた。
「先生って、すごい……。」