Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「確かに、狩野くんはこんな問題には慣れてないから、正直しんどいんだろうとは思ってるよ。でもね、きついなぁ…厳しいなぁ…って思うことをしなきゃ、人間は成長できないものなのよ。ラグビーのことはよく解らないけど、ラグビーだって、一番きついと思うことを克服できないと、強くはなれないでしょう?」


 みのりのこの言葉は、〝ドキン!〟と遼太郎の心に響いた。


 きついことから逃げ出したいと思っている今の自分を顧みて、遼太郎は唇を噛んだ。
 今みたいな自分では、きっとラグビーでも強くなれず、また都留山高校に惨めな敗け方をしてしまうだろう。


「狩野くんは、進路については、どんなふうに考えてるの?」


 いつもは怒涛のように日本史のことばかりまくし立てていたみのりが珍しく、日本史以外の話題に触れた。

 難易度の高い演習問題に対して、ちょっと遼太郎が息切れしているのを見て取ったからだった。


「いや、まだはっきりとは決めてないんですけど……。」


と、遼太郎ははっきりしない言葉を途切れさせた。


「決めてないって、指定校推薦のために私立文系クラスにいるんじゃないの?」

「それは、そうなんですけど……。」

「だったら、もう早く決めて動き出さないと、あっという間に選考のある秋になっちゃうよ?」

「…….はあ……。」


 歯切れの悪い遼太郎に、みのりは歯がゆい思いがした。


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