Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
みのりはさらに言葉に力を込めて、シャープペンシルを持つ遼太郎の右手をギュッと握った。
「頑張れ、頑張れ!って、無意味に連呼するのは好きじゃないけど、ここぞって時は踏ん張って、本気で頑張らなきゃ!〝諦める〟のは、本気で頑張った人だけが許されることなのよ。」
遼太郎は、まだ十八歳だ。こんなに若いのに、諦めてほしくない。遼太郎に、夢を叶えてほしい。……そんな想いが、みのりに言葉を尽くさせた。
双方の話が途絶えた時、みのりはハッと我に返って手を引っ込め、そして急に不安になった。
「ごめん……、私。担任でもないのに、差し出がましいよね。ちょっと言い過ぎたかも……。」
「いや、先生の言ってることは正しいと思うし、言ってもらって良かったです。」
そう言う遼太郎の表情に、みのりは優しさと意志の強さを感じ、少しホッとする。
それから、目を窓の外に移して、夏の朝の輝く空を見上げた。少しひんやりした空気を吸い込んで、目を細める。
遼太郎はしばらく黙って、そんなみのりの綺麗な横顔を眺めていた。
「……先生。」
遼太郎から呼ばれて、みのりは遼太郎に向き直って、いつもの柔らかい眼差しを注いだ。
「俺、頑張ります。法南大学の指定校推薦に指名されるように……。それに、ラグビーも。」