Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
遼太郎が自分の決意を宣言すると、みのりは嬉しそうに微笑んだ。
「うん……!何でも力になるから、応援させてね!」
みのりのその微笑みと言葉は、たった今も遼太郎を力付けてくれた。なんだか、未来が明るく拓けていくような気がしてくる。
それから、みのりは我に帰るようにチラッと腕時計を確かめて、演習問題のプリントを片付け始めた。
そして、気を取り直したように、いっそう明るい笑顔を向けてくれる。
「大丈夫!狩野くんならきっとなんでも出来るよ。それで、それを乗り越えられた時に、きっとなれるから!!」
みのりがさらに勇気づけるようにそう言うと、遼太郎の顔に疑問が浮かんだ。
「なれるって、何にですか?」
「いい男に。」
にっこり笑いながら、みのりはプリントを遼太郎に手渡す。
みのりの言葉に、遼太郎は目を剥いた。
「……は?いい男!?」
「そうそう、いい男。外見だけじゃなく、心が鍛えられててこそ、いい男なのよ。」
「……!」
遼太郎はどぎまぎするのを隠せず、みのりを見つめる。
「狩野くん。是非、いい男になって!期待してるからね~。」
と、最後は冗談のように、みのりは笑って手を振った。
ちょうどその時、補習が始まる予鈴が鳴る。
「さ、今日の個別指導は、これで終わり。また明日ね?」
みのりが職員室へ戻ってしまった後も、遼太郎にはいろんな想いが渦巻いて、みのりに触れられた右手が妙に熱くて……、しばらくその場を動けなかった。