Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
「取り敢えず、食事に行こう。」
そう言って、石原は車を走らせた。
とは言え、近くの店を使うと、生徒や同僚に会わないとも限らないので、たかが食事のことにも気を遣う。
一番厄介なのは、教師は生徒に気がつかなくても、生徒の方はしっかり教師を判別できるということだ。
なので、高速道路に乗って、隣の隣の街まで走った。
そして高速道路を降り、山道に入る。カーブ道を登っていくと、眼下にささやかな夜景が見えてきた。
久しぶりに会えて話したいことはたくさんあるのに、みのりはまだ緊張が抜けきれず、ただ黙って車の窓越しに夜景を眺めていた。
石原の方も、黙って運転を続けている。
こんな風に石原に沈黙されると、決まってみのりは怖くなってくる。
……石原の気持ちが、もう冷めてしまったのではないかと。
みのりのこの恋には、いつもそんな不安がつきまとった。
小高い山の頂上付近に、小さなレストランがあった。スペイン料理とスモーク料理の専門店らしい。店内には暖炉があり、木造りのほっと落ち着ける雰囲気があった。
「素敵なお店。来たことあるんですか?」
窓際の夜景が見える席に落ち着くと、みのりが口を開いた。