Rhapsody in Love 〜約束の場所〜
しばらく遼太郎の添削指導から解放されたので、みのりは夏季休暇や年次休暇をとって実家へ帰ることにした。
しかし、夏の実家は多忙を極める。みのりの実家は〝お寺〟だった。
車で3時間かけて、田舎町の山寺へ帰ってきたみのりは、石段を上がった境内地からの風景を眺めた。
遠くに見える山並み、川が流れその前には田んぼが広がる。ここからこの風景を見るたびに、「帰ってきたんだな~」と、みのりはいつも思う。
お盆前なので、お墓参りに来た老婦人の檀徒の姿が見えたので、声をかけた。
「こんにちは。お暑い中ご苦労様です。」
「あらまあ、お嬢さん。久しく見なかったら、お綺麗になられて。」
檀徒は、歯の浮くようなお世辞を返してくれた。
その後に続く…「ご結婚は?」という問いは、2、3年前まではよく訊かれたのだが、最近では歳も微妙になってきたせいか、取り沙汰されなくなった。
だが、あれこれ訊かれると面倒なので、みのりはにっこりと笑顔で頭を下げて、そそくさと庫裡の玄関へと向かう。