Rhapsody in Love 〜約束の場所〜



「お父さん、お母さんがスイカ切ったって言ってるよ。」


 戸口から声をかけると、隆生は目を開けた。


「みのりか?」

「うん、ただいま。」


 みのりは短くそう言うと、居間へと戻って、やっとスイカにありついた。


 スイカを食べている最中、


「そうそう…」


と、喜美代は食べる手を休め、手を拭きながらいそいそと奥の部屋へと行き、紙袋を下げて戻ってきた。

 口にかかる種を出しながら、みのりが目にしたものは、お見合い写真。それも、5人分。


「どうしたの!?これ!」

「どうしたのって、いろんな人に頼んで、お嫁さんを探している人を紹介してもらったのよ。」

「ええぇ~……」


 みのりは眉間に皺を寄せて、あからさまに嫌な顔をした。


「見てみないのに、そんなに嫌がりなさんな。」


と、喜美代は立派な台紙に入ったお見合い写真を開いて見せた。


「いろんな人に…って、誰に頼んだの?」

「うーん、お檀家さんやら、区長さんやら…あとは、保険の外交員さんやら……」


これを聞いて、みのりは愕然として天を仰いだ。


「信じられない!そんなたくさんの人に言って回ってるなんて…!」



< 98 / 743 >

この作品をシェア

pagetop