欲しがりな彼。
ヤキモチ
「あれ?夏、来れたの?珍しいね。」
「まぁね。」
久しぶりに参加する大学時代の友達との飲み会。
就職してから、忙しくてあまり参加できなかった私には、懐かしい顔ぶれ。
それでも、みんな大学時代と変わらず話しかけてくれるから、とても楽だ。
「夏、今日はいいの?彼氏は。」
このメンバーの中で唯一ハルの存在を知っているのは、一番仲良かった由美子。
「うん。予定あるんだって。」
昨日も結局私の家に泊まったハルは、今日予定があると言ってた。
「へー。それで、こっちに来たと。」
「んー…。まぁ、そうなりますね。」
「いいですねー。お熱いようで。」
由美子とは、ちょくちょく会っているから、色々知っているのだ。
―――ドンッ!
「うわっ!?」
「ちょっと、由美子大丈夫!?」
由美子の背中にいきなり、男の子が倒れてきた。
酔っぱらいかな…。
「すいません。コイツ、かなり酒弱くて…って、夏さん?」
「ハル!?」
何と、酔っぱらいの男の子を介抱する友達は、ハルだった。
まさか、こんなところで会うなんて。
「遥くん?ひとりで、大丈夫?」
「あっ川崎さん。」
「私も手伝うよ。」
ハルに駆け寄ってきたのは、小柄で可愛らしい女の子。
今日、女の子もいたんだ。
「あー!大丈夫大丈夫!この人が手伝うから!」
「「え!?」」
私を指しながら言う由美子に、私とハルの驚いた声が重なる。
「え?いや、でも見ず知らずの方に…。」
川崎さんも戸惑い気味だ。
「見ず知らずじゃないよ。」
「え?」
「俺の大事な彼女。」
ハルはそう言うと、理解しきれてない川崎さんを尻目に片手で友達を抱えて、もう片方の手で私の手をつかんで店を出ていく。
「ちょっハルっ。」
「夏、お幸せに~。」
なんて呑気に手を振る由美子に見送られて店を出る。
「お願いします。」
ハルはタクシーを捕まえると、酔っぱらいの友達を押し込んで、行き先を告げて運転手さんにお金を渡して、見送る。
「いいの?ひとりで乗せちゃって。」
「うん。いつものことだから、大丈夫。」
「そっか。」
「夏さん。」
ハルは私の手を握る手にぎゅっと力を入れる。
「ん?」
「妬いた。夏さんの隣に男座ってたんだもん。」
「ふふっ。私もだよ、ハル。」
*ヤキモチ*
「夏さんがヤキモチ妬いてくれるなんて、明日は雪かな。」
「うるさいな。私だってヤキモチくらい妬くの。」
「でも、嬉しいよ。」
「……うん。」