出会い系ランニング
帰りは笑美の家の近くまで、必ず手を繋いで歩いた。
「ちょっと待ってて」
今日はいつも別れる場所まで来たら、俺の返事も待たずに笑美は走って行った。
もしかして、今絵を持って来てくれるのかもしれない。
そして、急いで家に向かっている今なら笑美の家がわかるかもしれない。
笑美に黙って後をつける罪悪感が一瞬よぎったけれど、好奇心の方が強くて、笑美が曲がった角からそっと顔を出すと、笑美が走って次の角を入って行くのが見えた。
確かあの辺は、同じ造りの古い借家が沢山並んでいる。
俺は足音をたてないようにそっと急いで追って角を入ったけれど、その時にはもう笑美の姿は見えなかった。
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