出会い系ランニング
俺は久々に自分の部屋を片付けた。
出しっぱなしで積み上げてあったマンガを本棚に納めて、ゴチャゴチャした机の上に本来のスペースを作って、滅多に自分でかけない掃除機をかけたら、居間の収納に掃除機を戻す時に母親が声をかけて来た。

「賢ちゃんが掃除するなんて珍しい」
「雪が降るんじゃない?」
もうじき夏だっていうのに酷すぎる事を言ったのは妹の妃奈だ。
俺と3つ離れているけれど、口が達者で昔から兄妹喧嘩になると俺は勝てた試しがない。
「俺だって掃除くらいするっつーの」
「嘘だぁ~、誰か来るんじゃないのぉ?」
妹がからかう口調で言うのにムッとして
「彼女とか、来るかもね」
と捨て台詞で居間を出た時は、今度こそ勝った気分だったけれど、背中ごしに妹の
「マジで!うゎ~、回しちゃおっ」
嬉々とした声を聞いて、妹に携帯で晒し者にされる事を知って、一気に敗北感を味わってガックリと肩を落とした。
しまった‥携帯中毒の妹に格好のネタを与えてしまった。
ここで構うと被害拡大しそうで、俺は諦めて放っておく事にして自室に籠もった。
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