出会い系ランニング
犬の散歩をしている人が俺達を見て無言で通り過ぎようとして、犬が抵抗してリードを引っ張っるので公園に入って来たけれど、犬を急かして早々に出て行った。
その様子がおかしくて少し笑ってしまった。
わかるわかる、その気持ち。俺だってカップルが座ってる公園になんて近付きたくないけど、犬はそんな空気読まないもの。
笑ったら、なんだか緊張が解けた。

「うちにも犬がいるんだよ。エミは犬好き?」
「‥あんまり大きくなければ」
おっ、良かった。
「チワワで、リッキーって言うんだ」
俺は携帯を出して、待受にしている上目遣いのリッキーを見せた。
「可愛い」
「でしょ?」
俺は調子に乗って携帯写真データのリッキーを沢山見せた。
お腹を出して寝てる所、おやつを前に待てをさせられてヨダレを垂らしてる所、おもちゃで遊ぶ動画も。
「本当はラッキーの予定だったんだけど、俺が習いたての英語で首輪に名前書いたら間違えてリッキーにしちゃって、そのままリッキー」
「あははっ」
エミが笑ってくれて、それが俺の失敗談でも嬉しかった。
「リッキー見に行く?」
「うん」
やった!リッキーのお陰で自然に家に誘えた。リッキー様様だ。後で美味しいおやつをあげよう。
俺はウキウキと浮かれてエミと手を繋いで家に向かった。
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