出会い系ランニング
「凄い!リッキーそのもの!今にも動きそう!」
エミが鉛筆を置いた所で俺は興奮を抑え切れずに言った。
エミは照れ臭いのか
「動物描くの好きかも」
って小さな声で言った。
ピンポーン、とチャイムが鳴って玄関が騒がしくなった。
はっきりとは聞き取れないけれど、ともちんの声が聞こえて俺はドキッとした。
友達に彼女を紹介するのって緊張する。いつも一緒にいると価値観とかって似て来るものだと思うけれど、ともちんはエミの事を怪しいとか言ってたし、彼女に対する評価がどうなのか気になる。
そんな事を考えてソワソワしていたら、
「帰る」
エミが急に立ち上がった。
「えっ、あ、じゃあ送ってくよ」
さっさと部屋を出るエミを慌てて追いかけた。
玄関にお母さんと妹とともちんが居てエミは怯んだように止まった。
「あらエミちゃん、もう帰るの?」
「‥はい。お邪魔しました」
エミは小さい声で言ってサンダルを履く。
「送って来るから。ともちん適当に居て」
「おぅ」
「また来てね」
よそ行きで優しい声のお母さんの言葉にエミは頷いて、俺と一緒に玄関を出た。
「なんかごめんね」
俺は気まずくて謝ったけど、エミは無言だった。
しばらく無言で歩く。俯き加減のエミが何を思っているのか分からず俺はチラチラ様子を見ながら歩いていたけれど、行きに寄った公園でエミがふと顔を上げてベンチの方を見たのが分かって、あぁきっと今同じ事考えた、って思って思い切ってエミの手を取ってキュッて繋いだ。
「楽しかったね」
「‥うん」
エミは小さく言ってキュッと手を握り返してくれた。
それだけで嬉しくて嬉しくて、幸せな気持ちでいつものコンビニの先、エミの家が見える手間まで一緒に歩いて
「またね」
と別れた。