出会い系ランニング
「うそ‥」
それは、今の俺からは想像もつかない程に太った俺だった。
「‥全然違う人みたい」
顔は頰が丸くアゴがない。身体も全体が丸くてシルエットがまるで違うから、別人と思われても仕方ない。
いやむしろ、昔の俺の知り合いからしたら今の俺が別人で、会ってもすぐに俺と分かる人は居ないだろう。
「今と20kg違うから」
細身のエミはきっと人生で一度も太って困った事なんてないんだろうな、と思ったらちょっと自嘲気味になる。
太っていた頃の俺は何をするにも意欲に欠けていた。勉強も運動もやりたくなくて、ただ与えられた課題をいい加減にこなしていた中高時代だった。
「これ、ともちん。この間うち来た人だよ」
細身でメガネのともちんは昔から変わらない。小学校からの付き合いのともちんは、俺が太る前から太り出した中学、すっかり巨漢だった高校と変わらず友達で居てくれたんだ。
「俺この頃はなんだかやる気が出なくて、食べてばっかりいたから‥去年浪人してた間にランニング始めて変わったんだ」
「ふーん‥」
エミの返事は俺が期待した程の関心を示さなかった。
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