出会い系ランニング
エミはあまり口を挟まずに絵を描いていたけれど、興味深く耳を傾けてくれているのが感じ取れた。
時間はまたあっという間にたって、気付けばシンデレラタイムを過ぎようとしていた。
「今何時?」
「あ、6時55分だ」
その時のエミの青ざめた顔が、忘れられない。
「帰る」
「送るよ」
「いい」
エミは急いで1階に降りて母と鉢合わせて
「あら、エミちゃん、夕飯食べて行かない?」
って言われて
「いいです」
冷めた口調で断ってた。
俺もいいって言われたけど急いで後を追う。
「待って、エミちゃんっ」
エミはサンダルをペタペタ鳴らしながら走って行く。
俺はランニングシューズを履くのに手間取って出遅れたけど、すぐに追いつく。
暫く一緒に走っていたけど、エミはどんどんペースが遅くなって、ついには腰を折って両膝に手をおいて立ち止まった。
まだ息が切れるような距離でもスピードでもない。
「大丈夫?」
苦しそうに肩で息をするエミの背中にそっと触れると、スウェットごしに背骨のデコボコが感じ取れて、ドキッとした。
エミは頷いて、また小走りに走り出す。
俺は早歩きでも付いて行けそうなスピードで並走しながらエミの顔色が悪いのを気にしてた。
「もう、いいから」
いつもの別れ道まで来て、突き放すようにエミが言って俺は立ち止まった。
「またね!」
走り去る後ろ姿に言って、見えなくなるまで見送った。
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