ヴァージン=ロード
燻る炎
Smoldering fire
まん丸の目が私を見つめている。ぱっつん前髪のお団子頭の童顔な彼女は、両手に頬をのせて、肘をつきながらアイスティーをストローで飲んでいる。
「夢乃、お行儀悪いよ」
「うっはい」
どうやら、うるさい、と言いたいらしい。ちゅーっと勢いよくアイスティーを吸い上げて、ぷはあとストローを放した。
彼女の名前は前原夢乃。旧姓、篠田。私がモデルになるきっかけを作った悪友である。
「あんた、早く男作りなさい」
「またその話?」
「またその話? じゃない! 全く。せっかく人がブーケ投げつけてやったってのに、なんであんたはまだ売れ残ってるのよ」
夢乃は二十二歳で結婚し、現在一児の母である。自身で立ち上げたファッションブランド・Dream‐non、通称ドリノンのデザイナーでもある。かくいう私はドリノンの専属モデルの一人でもある。
その仕事でもプライベートでも充実した生活を送っている夢乃からしてみると、六年以上彼氏もいない干物女と化している私が許せないらしい。