ヴァージン=ロード
私は何気なく受け取った資料を開いた。すると、知らずに感嘆の声が漏れた。
光と影によって雰囲気の変わる風景、壁一つをとってしても、そこには趣や情緒が隠せない。
生活空間というには、生活感に乏しい――と思いきや、人がそこにいると一気に家庭的な雰囲気を醸し出している。
「素敵……」
なんて素敵なんだろう。
この部屋を、天井を、床を、壁を、この建築物を、私が魅せることができたなら、どれだけ素敵だろう。
「彼の要望を聞いて、ISAKIが適任だと思ったんだ。念のため一通りうちの子達の撮影を見てもらったんだけどね。やっぱりISAKIが良いって話になってね」
「そういう話なら、受けないこともないですけど……」
翠さんの言葉に、受けたいという気持ちが湧き上がってくる。でも、果たして彼の作品に私が必要だろうか。
自慢じゃないけれど、私にだって自分のオーラというものがある。雰囲気とも、人は呼ぶ。それか彼の作品の良さを打ち消してしまいはしないだろうか。
躊躇しかけた私の心を見透かして、翠さんがとっておきの後押しをしてきた。