ヴァージン=ロード
「あんた、ほんと、綺麗な顔して性格だって全然悪くないし、っていうかいい女なのに、なーんで売れ残っちゃうかなぁ」
「さあね」
羽宮伊咲、二十六歳。彼氏はずっといない。
「まあさー、あんたが男だったら私速攻であんたと結婚してたけどね、うふふ」
羽宮伊咲、女。ついたあだ名はミス・イケメン。
私はため息をついた。別に、私だって彼氏が欲しくないわけじゃない。
「私だって結婚するなら男としたいわよ」
私のぼやきを聞き逃さず、夢乃がさらに身を乗り出してきた。私は人差し指で夢乃のおでこを押しかえす。
「近づきすぎ」
「今度のパーティ、ちゃんと来なさいよ? うちの最高のドレス着てもらうから」
夢乃の唐突な言葉に、私は首をかしげた。パーティなんて、初耳だ。
「パーティってなに?」
「あら、まだ聞いていない? 事務所には話がいっていると思うけど、この前のファッションショーの打ち上げパーティよ。専属モデルのあんたは断らないよね。私の主催よ? もちろん来るわよね?」
しつこいくらいに念押ししてくる夢乃は、私があまりそういったパーティに出ないことを知っている。
ただ単に、人ごみが苦手なだけだ。