ヴァージン=ロード
「あー、私も結婚したいわぁ」
栞がぼやいているけれど、どうしてそんなに結婚に憧れるのかわからない。まあ、栞は私より年上だから、焦りも強いのかもしれないけれど。
でも、結婚なんて、人生の墓場に決まってる。
うまくいく人もいるのかもしれないけど、私はきっとうまくいかない方の人間だと、根拠もなく考えていた。
夢乃に言うと、いつも呆れられるんだけど。
「私は結婚よりも、仕事を続けていたいなぁ」
「天職だものね、ISAKIにとっては」
結婚して家庭に入る自分を、私は想像できない。
結婚したらモデルをやめる人が多いけど、私がこの仕事を辞めるときは、自分の魅力を表現できなくなった時だ。結婚する時じゃない。
「シオは、結婚したらモデル辞めるの?」
「そうね、考えるかな。私もこの仕事ずっと続けられるわけじゃないと思うし」
栞がちょっとだけ寂しそうに言った。
「心配すんなって。栞が結婚するのはずっと先だから、当分はこの仕事続けられるぞ」
「あ」
栞の額に青筋が浮かんだ。リキに飛びかかろうとする栞を、私と良が抑えた。
「待って待って待って」
「ちょ、栞落ち着いて!」
「放しなさい! リキぃー、あんた面貸しなさい!」
レアが笑いながらパスタを口に運んでいる。