ヴァージン=ロード


 打ち合わせの後、カノンさんは次の予定があると言って先にその場を後にした。私は特に予定も入っていなかったので、荷物をまとめながらどこかに行こうかぼんやり考えていた。

「ISAKIさん」
「はい?」

 部屋を出ようとしたところで、白木さんに呼び止められた。

「この件、引き受けてくださってありがとうございました」

 何度も聞いたその言葉に、私は笑う。

「お礼言いすぎですよ、この前から」
「いや、嬉しくてつい」

 大の男が照れたように頭をぽりぽり掻いている姿は、子供のようでちょっと可愛かった。

「夢だったんです。自分の作品集を作ることが。だから、ISAKIさんが力を貸してくれることが本当に嬉しいんです」
「白木さんのお手伝いができて、私も光栄です」
「宗広」
「え?」

 白木さんはにこっと微笑む。

「宗広でいいよ。兄もいるからややこしいし」
「宗広さんですね。羽宮伊咲です」

 私も本名を名乗った。
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