ヴァージン=ロード
「この私に任せなさい」
2回目の白木さんとの打ち合わせには、私とカノンさんの他にも夢乃も同席していた。いつものお団子頭に、白地にオレンジの水玉のワンピースを着た夢乃は腰に手を当て威張りくさった様子で白木さんに宣言した。
「この、伊咲の魅力を自由に表現できる衣装づくりにかけては、私の右に出るものはいないわ。私に声をかけるだなんて、目が高いわね。最高の黒猫の衣装を作るわ」
「は、はい、よろしくお願いします」
夢乃の勢いに、白木さんが目を丸くしているのも無理はない。隣でカノンさんが私に耳打ちしてきた。
「夢乃さん、とても張り切っているわね」
「はい……本当に何か申し訳ないです……」
夢乃はテーブルの上に写真を広げて眺め始める。そしてその口元に笑みが浮かんだ。
「素敵ね。この子達を伊咲が、ISAKIが魅せるわけね」
突然夢乃がしゃがみこんで自分の鞄をあさり、中からファイルと筆記用具を取り出した。そのままおもむろにテーブルつくと、ファイルから真っ白な紙を出して、何かを描きだした。
呆気にとられた私達三人は、誰からともなく夢乃の手元を覗き込む。
簡単な人型に見覚えのある数字とバランス比率――その人型に、真剣な顔をした夢乃が驚くような速さで黒のワンピースを着せていく。
それも一つだけじゃなく、あっという間に何枚かのラフを書き上げた。