ヴァージン=ロード
「みなぎってきた」
テーブルをぱんっと叩いてペンを置いた夢乃の瞳がきらきら輝いている。
「伊咲、当日ヘアメイク私がやるから」
「えっ」
思いがけない言葉に、私は驚く。けれど、先のファッションショーの裏で小さな鬼軍曹となってモデル達の着こなしやヘアスタイル、メイクに口出しをしていた夢乃の姿を思い出し、納得した。
「ファッションって、デザインって、服だけじゃ完璧じゃないの。モデルとそのヘアスタイルやメイクも、私の作品のうちなの」
「なに、夢乃、撮影についてくる気なの?」
「当然よ!」
私は困って宗広さんを伺った。この勢いになってしまった夢乃を止めるのは至難の業だ。
「でも夢乃、仕事はどうするの」
「そんなのどうにでもなる! 私を誰だと思ってるの」
夢乃の勢いに押され気味だった宗広さんだったが、姿勢を正して夢乃に向かった。
「前原さん、大変申し訳ないですが、この写真集は僕の作品がメインなんです。モデルのISAKIがメインじゃないんですよ」
宗広さんの言葉に、夢乃は心外だという風に口を尖らせた。この小柄な友人はころころと表情を変える。