ヴァージン=ロード
忍び寄る影
Stealing up
今日は某スポーツブランドの撮影で、良と一緒だ。二人とも、新作のスポーツウェアを着ている。
撮影後のインタビュー待ちで、しばしの休憩時間があった。
「で、どうなん?」
「は?」
唐突に良に訊かれ、私は間抜けな声を出した。良はにやにやと私を見ている。
「しょっちゅう食事に行ってるんだろ? 白木さんと」
「ああ、しょっちゅうってほどじゃないけれど、何度か一緒に食事しているわ。誰から聞いたの?」
「リキ」
きっとカノンさん経由で聞いたのだろう。
「どうって、どういう意味?」
「そりゃあもちろん、ISAKIにも春が来たのかなーと」
私はむくれ顔で良を殴りつけた。
「いってぇ」
「そんな下世話なこと考えないでよ。宗広さんは仕事のパートナーよ」
「はいはい」
本当に、この男は色ボケで困る。
「で、撮影の方はうまくいってんの?」
「そうね。もう撮影も佳境って感じ」
あれから、数日にわたって撮影を繰り返していた。そのたびに、宗広さんの私に対する態度が変わっているのには気づいていた。といっても、色めいたものではない。
宗広さんは、こちらが申し訳なくなるくらい私の仕事を認めて、感動してくれている。
私も私で、宗広さんがデザインした建物を回るたび、彼の作品の魅力に感じ入っているから人のことは言えない。