ヴァージン=ロード
「あとは、ここからは遠いけど日帰りで行けるところが数か所残ってて、問題は関西の方にあるやつなの。泊りがけになりそうだから、スケジュールの調整が必要だし、ちょっと行き詰ってるのよね」
それは、建築デザイナー白木宗広を語るためには避けて通れない作品だった。
ラヴィンユという名の、白亜の迷宮と呼ぶに相応しい荘厳な建物は、普段は結婚式場として使われている。広大な敷地を占めており、一度に数組のカップルが式を挙げることができ、披露宴までできる会場がある。
このラヴィンユを写真で見たとき、カノンさんも私も絶対に撮らなければならない作品だと感じた。大きさも然り、その細部にまで及ぶデザインの緻密さや繊細さは目を見張るものがあり、誰もに見てもらいたい美しい作品なのだ。
「私達のスケジュールもあるし、結婚式場として使われているからそっちのスケジュールもあるのよ。私としては早く直で見てみたい」
あの白亜の迷宮との黒猫の対比が楽しみで、私自身も凄く楽しみにしている。
「ふーん、ISAKI、楽しそうじゃん」
「すごく楽しいわよ。私の持ってる力が試されてるみたいで、本当にやりがいがある。もちろん、いつもの仕事だって楽しいけど、今回は格別ね」
「白木さんのおかげだな」
良が笑って私の頭をなでた。私は言葉の意味が分からず、首をかしげる。
「インタビュー準備できましたー!」
「はーい、今行きます」
スタッフが呼びに来て、良が返事をした。
「さ、行くか」
「うん」
私達は、インタビューに向かった。