ヴァージン=ロード

「あーっ、もう可愛いーっ」
「ほんと、伊咲って子供好きよね」

 腕の中でアリスちゃんが少し笑ってくれて、私のテンションがマックスになる。

「私、今日頑張れる」
「はいはい、わかったから着替えに行こうか」

 夢乃に促され、私はしぶしぶアリスちゃんをカノンさんに返した。

「それじゃあ、私はアリスをリキに預けてくるわね。宗広さん、案内してくださいます?」
「……」

 カノンさんが宗広さんに声をかけるが、反応がない。私も夢乃も、宗広さんを見た。

「宗広さん?」
「えっ、あ、プレイングルームですね! 今ご案内します」

 そう言って、カノンさんを案内して廊下の奥に向かった宗広さん。なんだか挙動不審な宗広さんに、私と夢乃は顔を見合わせる。

「どうしたんだろうね?」
「さあ……」

 不思議には思ったものの、それよりもこれから始まるこのラヴィンユでの撮影が楽しみで、私はすぐに準備に入った。


 BCプロジェクトが始まってからずっと楽しみにしていた、このラヴィンユでの撮影。
 だけど、この撮影が私のことを苦しめることになろうとは、この時の私は気づいていなかった。

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