ヴァージン=ロード
私は泣きそうな顔をしていたと思う。
宗広さんは何が起きているかわからないようで、不安そうに私達のやりとりを見ていた。一方の夢乃は、なんとなく状況を悟ったらしかった。
「続けられます!」
「いいえ、今の貴女じゃ、最高の一瞬は撮れないわ」
厳しい表情をしたカノンさんの宣告に、私の中の炎に冷水を浴びせられたかのような衝撃を受けた。
勢いよく燃え上がっていたはずの炎が、いつの間にか煙になっていた。
いつも、私を進ませてくれていたはずの、炎が、消えかかっていた。
「ISAKIちゃん、ちょっと頭を冷やしましょう? ね」
カノンさんが心配ないというように、穏やかに私の頭をなでてくれた。
悔しくて、唇を噛んだ。
私は、忘れていたんだ。
このラヴィンユが結婚式場だということを。
私が、結婚という儀式に、恐怖にも似た黒い感情を持っているということを。