ヴァージン=ロード
伸びる芽
Growing Sprout
着替え終わって、落ち込んだ様子で部屋のベッドに座っていた私のもとを、夢乃が訪ねてきた。
「伊咲、大丈夫?」
夢乃が、私の正面に座った。いつもはずけずけとものをいう夢乃が、遠慮しているのがわかる。
「大丈夫じゃないよ。最後なのに、時間が限られているのに……ふがいない」
カノンさんに申し訳が立たない、そう思って頭を抱えていると、カメラを持ったままのカノンさんが部屋に入ってきた。
「カノンさん、本当にごめんなさい……」
そんな私の隣に、カノンさんは腰かけた。その重みで、ベッドが少し揺れた。
「伊咲ちゃんは、結婚に良い感情を持っていないの?」
核心をつくカノンの言葉は、さすがだと思った。
「わかっちゃうんですね、カノンさん」
「私はファインダーを通して、貴女のすべてを理解しようとしているんだもの」
黙り込む私に、カノンさんが言葉を続けた。
「ちょっと聞いてくれるかな?」
カノンさんの静かな声に、私は顔を上げた。夢乃も静かにカノンさんの言葉を聞いている。
「私はね、自分が結婚するだなんて思ってなかったの。というよりも、人が苦手で……まともに男の人とも付き合ったことがなかったんだよ」
「人が……苦手? カノンさんが?」
全く、そんなそぶりを見せていなかった。