ヴァージン=ロード
高校生になってモデルを始めたときに家を出るまで、私はそのような環境で暮らしていたのだ。
だから、どうしても結婚という儀式が怖い。
頭では分かっている。結婚して幸せになる人も多いのだと。
知人の結婚式に出て、幸せそうだと感じることだってある。
それでも、その幸せは私のもとには絶対に来ないのだとわかっていた。
私にとっての結婚のイメージは、赤の他人が、お互いの嫌なところを我慢して、いやいや暮らしている――そういうものなのだ。
どうしても、そのイメージがぬぐえないから、結婚を夢見ることができない。
「……夢乃は、結婚してよかったって思う?」
「え? うん。ののも生まれたし、旦那も私の我が侭きいてくれるからね……凄く恵まれてると思うよ」
そう、頭では分かっているのだ。カノンさんや夢乃のように、幸せになる人だっているってこと。
そして、このラヴィンユがとても素晴らしい場所だと、わかっているのだ。