ヴァージン=ロード

 私は、バルコニーに出た。風が私の髪を揺らす。手すりに触れれば、そこにだって細やかな装飾が施されている。

「本当に、凄い」
「ありがとうございます」

 独り言のつもりが返事があり、私は驚いて振り返った。

「宗広さん」
「こんなところにいたんですね。隣良いですか?」

 特に断る理由もなく、私は頷いた。そして二人して並んで、そこから見える景色を眺める。
 このバルコニーからは、隣の棟が見える。披露宴会場として使われる大広間があるらしい。

「さっきは……本当にごめんなさい」
「いえ、正直、突然のことで僕には何が起こったのかわからなかったんですよ。お恥ずかしながら」

 言外に、何があったのか訊ねられているのだと思った。

「私……ごめんなさい、あんまり結婚に良い感情抱いていなくて。ここが結婚式場だって意識してしまったら、うまく立ち振る舞えなくなってしまったんです。時間が限られているのに、本当に情けない……」

 宗広さんの方を見ようともせずに、私は告げた。きっと呆れられているだろう。

「なんで謝るんですか?」
「え」

 宗広さんを見れば、とても優しい笑みを浮かべていた。

「だって、せっかくの撮影を……」
「もし今回が駄目なら、また別の日に来ればいいんです。やり直せばいい、それだけなんですよ」

 彼の優しい言葉に、思わず泣きそうになった。
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