ヴァージン=ロード

 私の目から、涙がこぼれた。その涙を、宗広さんが遠慮がちにぬぐってくれた。その手が冷たくて、優しくて、私は感情を抑えることができなくなってしまった。
 涙が止まらなくなってしまった私に、宗広さんが困った顔をする。

「そんなにきれいなお化粧してるんです。あとで夢乃さんに泣いたってばれちゃいますよ」
「きっとカノンさんにもばれちゃうと思います」

 私は泣き笑いで涙をぬぐう。

「ラヴィンユは、凜さんへの僕からのプレゼントです。凜さんがたくさんのカップルに最高の結婚式を提供できるように。凜さん自身が、最高の結婚式を挙げることができるように、と、そう思ってデザインしました」

 突然失われてしまった幸せ。でも、その失われた彼との結婚式を何度も繰り返しているように感じるという神坂さん。
 きっと今でも、神坂さんは亡くなった彼と一緒に生きているんだ。この白亜の迷宮で。

「結婚するって、きっと怖いことだと思います。今まで別の人生を生きてきた二人が同じ家で暮らすんだ。
 凜さんが言ってた。結婚するのは、相手のすべてを受け入れるってことだって。この世には、受け入れられる運命の人がいる、それが凜さんにとっては亡くなった恋人だったって。
 伊咲さんも、そんな運命の人に出逢えるといいですね」
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