ヴァージン=ロード



 第一声は、謝罪の言葉だった。

「先日は、ごめん」
「……えっと」

 マンションまで車で迎えに来てくれた宗広さんは、車から降りて私を見るなり頭を下げた。

「この前は、伊咲さんが他の男の人と楽しそうに話しているのを見て、年甲斐もなく嫉妬してしまって……」

 その言葉に初めて、私は宗広さんに異性として意識されているのだと自覚した。途端に、少し気恥ずかしくなる。

「あの、すみません、もしかして……宗広さん、私のこと女としてみてます……?」
「えっ」

 思いもよらない質問だったのか、宗広さんは目を白黒させている。そんな彼が可愛くて、申し訳ないけど笑ってしまう。

「もちろん、伊咲さんは素敵な女性だと思っていますよ」
「またまた、いろんな人に言ってるんでしょ」

 照れ隠しに軽口をたたきながら、私は宗広さんに促されて助手席に座った。

「今日の恰好も、素敵です」

 運転席についた宗広さんが、こちらも見ないでぽそりと言った。照れているというのがわかってしまい、私は微笑む。

「ありがとうございます。宗広さんも格好いいですよ」
「そうかな。ありがとう」

 やっぱり、宗広さんといると変に気負わなくて済む。
< 80 / 139 >

この作品をシェア

pagetop