ヴァージン=ロード

「僕は、一度仕事に入ると周りが見えなくなってしまうんだ」
「どこかで聞いたことがあるわ、それ」

 私も、仕事の時は周りが見えなくて帰ってこれなくなる。
 宗広さんも、笑った。

「伊咲さんの、ISAKIの仕事ぶりを見て初めて、他人が見てる自分ってこんな感じなんじゃないかって思い当ったよ」
「なにそれ」
「でも、本当だ。伊咲さんが僕の作品を褒めてくれた時も、本当に嬉しかった。心のどこかでね、伊咲さんなら僕のことを理解してくれるんじゃないかなって思っていたんだ」

 宗広さんの優しい瞳に、私が映る。

 胸の奥が、きゅんっと温かくなった。

「不思議だよ、なんでそんなふうに感じたのかはわからないけど……。実際にそんな話をしたわけじゃないのにね。なんとなく、本当になんとなく、君ならって……ごめん、ひくよね、こんなこと聞かされて」
「ううん、なんか特別みたいで嬉しい」

 彼が私の仕事ぶりを近くで眺めてきたように、この穏やかな人が作品を作る様子を近くで眺めてみたい――。

 私は、そう思った。


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