ヴァージン=ロード



 ちょっとメイクを変えて、髪型を変えれば雰囲気は大いに変わる。それを利用して人ごみに紛れることは難しいことではない。
 さすがにリキやレアと一緒だと目立ってしまうけれど、私や良ならごまかせる。
 仕事終わりに良とご飯に行くことになったけど、行った先は人でごった返すラーメン屋だ。

「辛味噌ラーメンと野菜味噌ラーメン」
「あいよっ」

 威勢のいいおじさんの返事が気持ちいい。

「ラーメン久しぶりー」
「俺も」

 ラーメンが運ばれてくる前のちょっとした間に、良が私を見た。なんだか、物言いたげに見ている。

「ん、どしたの?」
「いや、あとで話すわ」

 なんだか様子がおかしいけど、後で話すと言われたら話してくれるのだろう。しばらくしてすぐにラーメンが運ばれてきた。
 私はレンゲと箸を繰って、精一杯冷ましてから辛味噌ラーメンをすすった。
 その様子に良が苦笑した。

「あいっかわらず猫舌だなぁ」
「うっさい」

 ふーふーしながら一生懸命麺と格闘していると、良がぼそっと呟いた。

「俺、結婚するわ」
「……っ!」

 思いがけない報告に、私は目を見開いた。そして勢いよく口の中の麺を咀嚼して飲み込む。
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