雪どけの花
だが次の瞬間、相手を見て全身から力が抜けた。



「なんだ、高村か…」



「うわぁっ!!お前こんなとこで、何やってんだ。脅かすなよっ」


まさかここに人がいるとは思ってなかったらしい…まぁ、当然の反応だろうけど。


「ちょっとね」


「ちょっとねって…何でそんな残念そうな顔すんだよ。誰かと待ち合わせでもしてるのか?」

「違うよ。そういう高村こそ、こんな所に何の用だ?」

言いながら、ホッと胸をなで下ろしていた。

「いや、それがさ。捜してるんだよ、大原を」




「……大原?」




彼女の名前が出てきて、僕はドキリとする。

「日直なのに、この時間になっても日誌を職員室に持って来てないらしい。でもカバンは教室に置いたままになってるんだよな」

それを聞いた途端、収まっていたはずの胸騒ぎが頭をもたげ始める。

「だから担任と、放課後まだ学校にいる連中と捜してるんだ。狭間、どこかで見かけなかったか」

「いや…」

「屋上のドアは…開いてる訳ないか」

「うん、さっき興味本位で試してみたけどダメだった」

「そっか、じゃあ他を捜してみるよ…………あ、所で具合は、もういいのか?」


今思い出したという様子を見て、僕は苦笑した。


「あぁ。僕も捜すの手伝うよ」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ」

「そっか。人手は多い方がいいから助かるよ…じゃ、行こうぜ」

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