雪どけの花
帰り道
騒ぎが収まった所で解散となり、僕は長かった1日にどっと疲れを感じていた。

倒れるやら、嫌な夢を見るやら、大原が行方不明になるやらで疲れない方が不思議だろう。



「狭間くん!!」

僕は校門を出た所で、人影に声を掛けられ立ち止まった。


「大原…」


「あ、あの…ちょっと話聞いて欲しいんだけど…時間ある?」


「…いいよ」


答えると、彼女はホッとした表情を浮かべる。

「じゃあ、駅まで歩きながらでいいから」

僕たちは肩を並べて、すっかり暗くなった通学路を歩き始めた。

本当は全て分かってしまっていた。

彼女を怒鳴りつけて手に触れた時に、うっすらとだけど何を思っていたのか、を。

「やっと本当の事を話す気になったのか?」

唐突に言うと、彼女は驚いたようだった。


「やだ、狭間くんって読心術でも出来るの!?」

「まさか」

僕はしれっと答える。

変な力を持っていて、心の中を見てしまいました、とは口が割けても言えない。


「実は日誌をつけるために、あの場所に行ったんじゃないの…。私、私ね本当は飛び降りようと思ってたんだ。でもいざとなったら怖くて出来なくって…ずっと躊躇って考えてる内に、狭間くんが来たの」


「じゃあ、居眠りしてたって言うのは…」


「ゴメン、嘘。足音が聞こえてきたから、咄嗟に寝たフリしちゃった」


彼女は苦い笑みを微かに浮かべた。
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