雪どけの花

「無理しなくていいから」

「えっ…」

「大原は、大原でいればいいんだよ。もっと自分を出していいんだ、楽しい時は笑って、悲しい時には泣いて…今しかないこの時間を大切にしろよ」

「狭間くん…」

ちょっとくさいセリフだったかなとも思ったけど、彼女は笑ったりバカにしたりはしなかった。



「私を捜してくれて、ありがとう」



彼女がポツリと言った。

「もし狭間くんが来てくれなかったら、私今頃…」

「本当にバカだよ、大原は」

言って、僕はくしゃりと彼女の頭を撫でた。


「うん……」


頷くと、俯いて小さな声で泣き出した。

「ごめん…ごめんなさい…」

「いいよ、好きなだけ泣いたらスッキリするから…キツい事あったら心の中にため込まないで、誰でもいい…僕でもいいから話に来いよ。いくらだって聞いてやる。だから約束。2度とバカな考えは起こさない事」

僕の言葉に、彼女はしゃくりあげながら何度も頷いた。

空はいつしか完全な夜に変わり、星が瞬いている。

女の子に泣かれて少し困ったけれど、ため込んでいた涙がなくなるまで泣いてしまえばいいと、僕は傍でいつまでも彼女の頭を撫で続けた。
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