雪どけの花
放課後
目を覚ますと、風に小さく揺れている白いカーテンが目に入った。

辺りは静かすぎるくらいだ。

僕はゆっくりと体を起こす。



ベッドの上……どうやら医務室らしい。



あぁ、そう言えば授業中に気分が悪くなって、倒れたんだっけ。

上履きを履くと、校医の先生を捜した。


が、姿は見当たらない。


黙って教室に戻ってもいいものかと考え、僕は壁に掛かった小さなホワイトボードに一言

『帰ります。2−1狭間』

とメッセージを残す。

気分の悪さも眩暈も、もうなかった。


腕時計に目をやると、もう5時になろうとしている。

もう放課後なんだ。

苦笑すると、カバンを取りに行こうと思い、僕は医務室を出て教室に向かった。





「おぅ、狭間。具合はもういいのか?」



教室のドアを開けると、カバンを2つ持った高村が人懐っこい笑顔を浮かべて声を掛けてくる。


「あぁ、すっかり良くなったよ。もしかして、お前に迷惑かけた?」

「気にすんなよ…でも、お前担いで医務室まではちょっとしんどかったけどな」

言って、笑う。

「サンキュ」

「担任と現文の鈴木が心配してたぞ」

「そっか。じゃあ、職員室に顔だけでも見せてくるよ」

「そうしてやれ。…1人で大丈夫か?途中まででよかったら一緒に帰るけど」


それでもまだ少し、高村は心配そうな表情を浮かべて僕を見た。


「気持ちだけありがたく受け取っておくよ。午後の授業分のプリント、貰って帰ろうと思ってるから遅くなるかもしれないし」

「わかった。じゃ、また明日な」

「うん、今日は本当にありがとうな」


僕は小さく笑うと、手を振って別れた…。

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