雪どけの花
      ☆

高村と別れ、職員室を出たのは6時を過ぎた頃。

靴箱へ向かおうとした僕の視界の隅に、人影が映って足を止めた。

相手も僕の存在に気づいたらしく、こっちを見ている。


「大原…?」


声を掛けたが、相手は何も言わずに階段を上って行った。


人違い、だったかな。


薄暗かったけど、確かにクラスメートだったと思う。


……でも何で上に行くんだ?


何だか妙な気がした。


なぜかは分からない。

ただ彼女が自分の教室に行くのであれば、ここは全く逆の場所にある階段であるのは確かだった。


胸騒ぎがする。


気になった僕は、いてもたってもいられず人影の後を追った。


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