雪どけの花

足音は上から聞こえてくる。

教室は3階までしかないのに、足音はその上から。

そこは唯一、屋上に行く事の出来る階段がある場所だった。

常時、鍵は掛かっているのだが…。


ガチャリ。


ドアが開く音が響いてきた。

僕はドキリとして、階段を駆け上がる―――。


「何やってんだよ!!」


思わずドアの向こうの光景に叫んでいた。


「あ…見つかっちゃった…」


大原由衣は僕らクラスメートの中でも、同い年とは思えない大人びた雰囲気の生徒だった。

僕は彼女が教室で友達と輪を作り、楽しそうに声を上げて笑っている姿はおろか、仲良く連んでいる姿すら見た事がない。

誰に話し掛けられても緩く微笑むだけなので、あまり人と話しをするのが好きではないのかなと思っていた。

とても綺麗な顔立ちで、その上勉強も出来て、スタイルもいい…なのに女子から嫌われていないのは、控え目で物静かな性格だからかもしれない。

皆から一目置かれている存在だった。


「消しゴム、拾ってくれてありがとう。具合はもういいの?」


「うん…あれ、大原のだったんだ」


そう言えば、拾って渡す前に倒れたからどうなったのか。


「消しゴム、僕渡さなかったよね…」


「狭間くんの机の上にあったから、貰っておいたわ」


そう言って、彼女は静かに背を向けた。

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