雪どけの花
太陽が沈んでしまった夕暮れに浮かぶシルエットは、そのまま空気の中に溶け込んで消えてしまいそうだ。
風が冷たい。
「どうして大原は、1人こんな時間にこんな場所にいるんだ?」
嫌な想像が胸の中に渦巻くのが嫌で、僕は彼女に尋ねる。
けれど返ってきたのは、意外な答えだった。
「………狭間くんが考えてる事と同じ答え、かな」
「えっ!?」
それを聞いて、僕は一瞬ドキリとする。
冷静に考えれば、何を思ったかなんて彼女に分かるはずはないのに。
動揺するなんてバカだ…。
「学校生活って人生の中でも短いし、今だけしか通る事のない道だって分かってるから一生懸命頑張ってみるんだけどね。時々、ふっ…て疲れちゃう」
「大原…」
「そんな時、こっそりここに来るの。ここから暮れていく空を眺めていると、訳もなく泣けてきたりして」
彼女の声が、だんだん小さくなる。
「とにかく、こっちに来いよ。柵から離れるんだ…そこは脆くなってるから、危ない」
僕はなぜだか焦っていた。
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