雪どけの花
屋上へのドアの前に立って、深呼吸を1つ。

そっとノブを回してみたが、ドアは開かなかった。


だよな。


そんな夢と同じシチュエーションが起こる訳がない。

いや、あんな事が現実に起こったら、それこそ大変だ。

けれど何だか気分が晴れなくて、僕は腕時計に目をやりドアの前に座り込んだ。

10分、20分…時間は静かに過ぎていく。



何をやっているんだ、僕は?



いい加減バカらしくなってきて立ち上がろうとした、その時だった。



ぱたぱた、ぱた。



誰かが階段を上がってくる足音が聞こえたのは。


まさか…。


僕は大原でない事を願う。

近づいてくる足音。

やがて踊場の壁に、人影が映った。


ゴクリ…唾を飲む。


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