まだ知らない愛。
そう言ってまた抱き締めてくれる瞬さん。

私は何度泣いてこの腕に抱き締めてもらうんだろう。そのたび瞬さんは私を優しく撫でてくれるだろう。
私は弱い。すごくすごく弱い人間だ。

瞬さんはきっと気づいているだろう。
まだ新しい背中の傷を。
また私が男に抱かれたことを。

それでも瞬さんは私の背中をゆっくり
優しく撫でてくれる。
涙は出ない。だけど鼻の奥がツーンとして
心臓を握られたような痛いような苦しいような感覚が胸のあたりで広がっていく。
「もう我慢するなよ」
瞬さん
「お前はなにも悪くない」
だめだよ瞬さん…
「強がるなよ」
やめて…
「お前は一人じゃねぇ」
泣いてしまう―…。


微かに香る瞬さんの匂いは
私の涙腺を壊すのには十分で
また私は涙を流した。
我慢するなよ…と静かに横で呟く瞬さんの声に
私は声をあげて泣いた。

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