まだ知らない愛。
HRが始まる合図がしたのと同時に私の椅子がコツンと音を立てた。
何かにぶつかったのかと思い振り向く。
「…これ、落ちた」
後ろの席の男の子が差し出してきたのは私の鞄のストラップ。
「あ、ありがとう…」
いくら人見知りでもお礼くらいはちゃんと言わないとね。お礼を言うと男の子は寝る態勢に入っている。
あーあぁ…壊れてる。このストラップお気に入りだったのになぁ…。

教卓に立って話を進める委員長の話も壊れたストラップも頭には既になく窓の外を見つめて瞬さんのことだけを考えていた。
そう言えば今日会ってない気がする…。
昼休みに屋上に行っても瞬さんは居なくて首を傾げる私に葵さんは「寝坊かな?」と言っていた。
でも起きた時には瞬さんの姿は既になくて先に学校行ったのかな?と思いリビングに行くと机の上に売店で買ったおにぎりが二つと「先に行っといてくれ」という置き手紙があった。
確か昨日、瞬さんは夜遅くまで誰かと電話をしていた気がする。
その時ふとよみがえる『綾芽』という名前。
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