まだ知らない愛。
横を見ると私をずっと見つめている瞬さんと目が合う。さっきは視線を逸らしてしまったけど
今はその瞳を見ていたい。
瞬さんの細くて綺麗な手が私の頬に触れた。
ゆっくりと近づいてくる瞬さんの顔。
外されない視線を私も離さないでいてやっぱり瞬さんの瞳は綺麗だと、その瞳が好きだと心から思う。
私の目から唇へと瞬さんの視線が変わったとき
甘く優しい声が私を呼ぶ。
「桜」
触れるようなキスにまた体が熱くなる。
顔が真っ赤になるのは自分でもよくわかった。
「瞬さん」
「ん?」
「なんかね、体が熱くて胸が苦しい」
さっきからひどく早い鼓動に熱くなる体は熱を持っているような、風邪をひいたのかと思うほど息苦しい感覚。
瞬さん一瞬目を見開いて、すぐにフッと顔が緩み優しく愛おしいというような顔で笑った。
「俺もだ」

初めて海へ行った。
初めて誰かと夜空を見て初めて誰かを心から愛おしいと思った。
もう、私がどんな人間でも私を受け入れてくれる瞬さんのそばを離れたくないと思った…。
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