まだ知らない愛。
俺が駆けつけた時には奏多は亡くなっていて。
助けられなかった。
綾芽も、奏多のことも。
『お前は強い男だから』
俺は…全然強くなんかない…。
その日から狂ったように奏多の名前を呼ぶ綾芽から俺は離れなかった。
そんな俺に何も知らない親友の翔はそっとしといてやれよと言った。
きっと今の綾芽を放っておくと自殺をしてしまうだろう。部屋の窓から見える空を見上げながら奏多を呼ぶその姿は、まるで迎に来てと言っているように思えた。

聞いた話によると、あの日学校を出た綾芽は龍神のことを一番敵視している火憐という族のやつらに連れ去られたらしい。それをたまたま見た同じ学校のチームのやつが情報部に連絡を入れた。
その連絡よりも早く立ち上がり、行ってしまった奏多には綾芽の心の叫びが聞こえたのかもしれない。
奏多が駆けつけた火憐の溜まり場は薄暗い路地裏で、拘束された綾芽がいた。
気味悪く笑う火憐の総長と助けを求める綾芽。
「この女、綺麗だなぁ?ヤっちまいてぇ」
その言葉にブチギレた奏多は暴れ狂った。
火憐の手下はもちろん、綾芽を舐めるように見ていた総長を必要以上に殴った。
相手の顔が血まみれになって原型を留めてなくても殴り続けた。
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