まだ知らない愛。
「総長が亡くなった龍神には先代が俺を総長に指名した」
「じゃ、総長になって二年経つの?」
「あぁ」
「でも綾芽さんと翔はつきあってないんでしょ?」
「みたいだな」
もう人間関係が苦手な上に複雑なので頭がパンク寸前だ。
それに…
「綾芽さんは、瞬さんのこと好きなんじゃない…?」
朝の二人、放課後の綾芽さん、呼び出してキスをしようとする綾芽さん。
恋愛経験は瞬さんが初めてでよく分らないけど
何となく、きっと綾芽さんは…
「かもな」
「え…?」
「この間、翔から電話があった」
「…」
「桜が好きなら綾芽をちゃんと突き放せって」
突然出てきた私の名前に顔を上げるとそれをさせないように私の顔を胸へと引き寄せる。

「あいつは、悪い奴じゃねぇんだけどな…」
そう言って瞬さんは寂しそうに笑った。
でも過去のことも呼び出された理由も包み隠さず全て言ってくれたのは
私に少しでも不安を与えないためだと思う。
そんな見えない優しさに愛おしくなって瞬さんを抱き締める。
「で?キスされたんだって?」
突然上から降ってきた不機嫌な声。
あの…今すごく甘い雰囲気だったよね…?
え、なに…何この人!
さっきまでの空気とは一転して不機嫌オーラを体から放つ男に抱きしめられている私。
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