まだ知らない愛。
そして口論の末、負けた私は二人で入ることになり、一緒に湯船に浸かる。
にしても…デカイ。
バスルームは普通の一軒家のリビングくらいの広さで、二人では広すぎる。
「桜、来い」
サラサラの黒髪が濡れていて色っぽい瞬さんが私の名前をそっと呼ぶとバスルームに静かに響く。

瞬さんの横へ行くと引き寄せられて密着する体。何も纏っていない体はいつもより瞬さんを近くに感じる。
バスルームから見える夜景は輝いていて私がここにいることが本当に不思議に思えてくる。
「桜」
低く甘い声とともに横から覗くようにして近づいてくる瞬さんの顔。
私を見つめる瞳は唇へと移動したとき
私も目を閉じる。
けど、目を閉じるときに見えたものに再び目を開ける。
「あれ?瞬さん…」
「あ?」
ちかっ!近いっ!!
喋るたびに一瞬触れ合う唇に顔が赤くなるが瞬さんは気にした様子ではなくそのままの距離で話す。
「なんだよ?」
「ふ…っ」
不意に出た甘い声に恥ずかしくて胸を押し返すけどビクともしない。
瞬さんの瞳を見ると少しだけ笑っているように見えた。
「って…、そうじゃなくて!」
顔を背けると不機嫌そうにやっと離れてくれた瞬さん。
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