SPRING ★ SPRING ★ SPRING
半年間、お互い顔だけは見てきたが
面と向かって話したのは今日が初めてだと言うのに
こいつは俺の事をそう言い切った。


「とりあえず自分で勉強してみて分からない事が出てきたら各教科の先生に聞けばいい。
私立クラスとは言え国立受験も考えてるのは渋沢だけじゃないだろうし。
後は、模試の時に絶対5教科分受験してさえくれれば
細かい事はその結果を見ながら考えれば十分だから。
他に何か質問は?」


と、これはくたびれた高校教師の言い方をした。


「ありません。」


だからそれを合図に
俺もまた無表情な言い方をした。


「そうか、じゃあがんばれよ。
俺は渋沢のパーソナリティにとやかく言うつもりはないから
いつでも気兼ねなく世間話しにこいよ。
渋沢が最初に言った通り、教師は贔屓目ばかりするからな、
お前は俺のお気に入りの一人だ、」


相談室を出ながら振り返ると
いたずらっぽく笑う中年の顔がみえたから俺も言った。


「俺、最近やたらと人に気に入られて困っているんですよね。
悩みの種が一つ増えたと思うと気が重いな。」


半分本音のグチを混ぜた嫌みに何か感じたのか
こちらをじっと見てきたのであわてて扉を閉めた。
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