SPRING ★ SPRING ★ SPRING
廊下に出ると
窓の外はもう暗くなっている事が分かった。


教室に携帯を置いてきたから時間は確かめられないけど
空の色からしてたぶん6時過ぎくらいだろう。


渡り廊下をぬけホームルーム棟に入り階段を上り廊下を歩き2-Bの教室の前にたどり着くと
静かなのにまだ電気がついていてぎくりとした。


結衣はまさかまだ俺を待っているのだろうか。


うんざりを通り越して最近恐怖でしかない彼女の終着に
なえそうになる心に鞭打って
おそるおそる開いた扉の先にいたのは結衣ではなかった。


窓際の一番後ろの席で机に突っ伏している
ベリーショートの頭と小柄な背中には見覚えがあった。


すぐに声をかけようかと思ったけど
すうすうと漏れる寝息に思わずほほえみ
のろのろと帰りじたくをする事にした。


ほんの5分くらいの差だけど
俺が帰る直前までは寝かせてやろうと思ったのだ。


「渋沢。」


ところが物音が彼女を起こしたのか
机の中身を鞄に詰めている最中に彼女の方から声をかけてきた。


「私たち、気があうと思うの。」


振り返った俺にかけられたその言葉は唐突だったけど
迷いのない断言だった。
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