SPRING ★ SPRING ★ SPRING
「裕吾、一緒に帰ろう。」


ホームルームが終わると
隣の教室から飛び込んできた結衣が
俺の背中に抱きついて言う。


「悪いけど先帰ってて。」


目を会わせないように
わざとらしく配られたばかりの進路調査票に視線を落とす。


「ええ何でぇ。
あ、進路相談とか?
裕吾はもう決めたの?」


わざわざ机の前まで回り込んできて、彼女は俺の顔をのぞき見る。


「まだ全然。
だから考えないと。
結衣は?」


無表情のまま彼女が愛想をつかす事を願いながら淡々と答える。


「あたしは裕吾と同じ大学にする。
だから出す前に調査票絶対見せてよ。」


と笑いながら俺を縛る視線の攻撃。


「お前文系だろ。
同じ大学とか無理っしょ。」


どうして分かれたいと思ってる彼女と
示し合わせて同じ大学受けなきゃなんないんだよ。


思わずふてくされて返答したら
都合の良い勘違いしてやがる。


「そんな落ち込む必要ないよ。
総合大学なら色んな学部あるし大丈夫。
裕吾も私も私立大受験だもんね。」


と何でそうも嬉しそうな顔するんだか。


「まあ、進路の事はまだ考え途中だしそのうちな。
用事ないなら帰れよ。」
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